ハートの創造
【目次】
1、ハートの創造
2、ハートの再創造
3、クマの着ぐるみ
4、不安さんを感じきる
5、何となくの不安さん
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【1、ハートの創造】
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こんにちは。夢ノ命です。
今日はハートの創造のお話です。
【あこがれ】さんの心友は、
【情熱】君と【ワクワク】ちゃん。
三人は大の仲良しで、
幼い頃からいつも一緒の幼なじみです。
一緒に遊んで、
一緒に学んで、
切磋琢磨しあい、
大人になってからも、三人はチームを組んで、
一緒にできる仕事を選びました。
三人のお仕事はハートを創造すること。
【ワクワク】ちゃんは、三人の中でも、
一番楽しむことが得意。
笑顔の魅力で、ハートの輪郭を描いていきます。
【情熱】君は三人の中でも一番熱い魂の持ち主。
色鮮やかにハートに色を塗り、豊かさを引き寄せます。
【あこがれ】さんは、三人の中でも、一番優しいロマンチスト。
ハートの雰囲気をアレンジする係です。
今日もまた、新しいハートの創造の時間がやってきました。
お母さんの陣痛が始まってから、命の誕生の瞬間までが、
三人の出番です。
「おめでとうございます。女のコですよ!」
助産師さんの声が、分娩室に響きました。
「名前もう決まってたわよね、ええっと…なんだっけ」
「えみこ……です」お母さんの心の底からの一息を待たぬうちに、
胸の上に、くるまれた赤ちゃんが乗せられました。
カンガルーケア。
ふと、赤ちゃんは泣き止んで、お母さんの胸にしがみつきながら、
その小さな目をそっと、少しずつ、あけました。
「おめでとう!本当におめでとう!」
【ワクワク】ちゃんは、赤ちゃんの頭の上をグルグル飛び回ります。
ちいさなちいさな赤ちゃんのハートは、
そのリンカクをひときわ光らせながら、
ちぎれた雲のように、ふわふわ揺れています。
【ワクワク】ちゃんの笑顔の魅力が、
えみこちゃんのハートを輝かせるのです。
「もう、そろそろ、いかなくちゃ」
【情熱】君が、【ワクワク】ちゃんの肩に手を置きました。
【あこがれ】さんが【ワクワク】ちゃんの手を、優しく握りました。
「忘れないで、えみこちゃん。あなたには笑顔の魅力の持ち主よ!」
遠く、離れていきながら、
【ワクワク】ちゃんは、声をかけ続けました。
眠りかけていたお母さんの耳元で、
かすかにささやくような声が聞こえていました。
退院後、女のコは、【笑美子】(えみこ)ちゃんと、名付けられました。
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【2、ハートの再創造】
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「ワクワクちゃん」と「情熱君」と「あこがれさん」がチームを組んで、
再び笑美子(えみこ)ちゃんに会いに行ったのは、
あれから28年後のことでした。
人生の節目や転機、人生最大のチャンスを迎える時、
人は、生まれ変わったような体験をすることがあります。
それはきっと、ハートの再創造が行われたからかもしれませんね。
【ワクワク】ちゃん、【情熱】君、【あこがれ】さん達は、
貴方のピンチの時には、必ずあなたの元へ駆けつけてくれます。
本当に?
本当ですとも。
本当ですか?
本当なのです。
彼らの肩を持つ気はありませんが、
彼らは、何よりもあなたのハートを創造したクリエイター達ですから、
貴方の分身でもあり、良き理解者です。
貴方がピンチな時に、貴方の目の前に現れて、
【貴方の本来の魅力や才能を】想い出すお手伝いをしてくれます。
貴方が登り坂を歩けなくなって苦しんでいる時、
貴方が下り坂を転がり続けて、自分を止められない時、
最大のピンチを最高のチャンスに変えるため、
ハートの内側の
ワクワクを揺り起こし、
情熱に火をつけ、
あこがれに目覚めさすため、
彼らは、ハートの再創造を手がけます。
【ワクワク】ちゃんと【情熱】君と【あこがれ】さん、
彼らは、目に見えない存在ですが、
貴方のハートと、いつもつながっています。
今日はそんなご自身の中の彼らに、
想いを馳せて、過ごしてみませんか?
じつは今も、あなたのそばに居るのかもしれませんよ。
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【3、クマの着ぐるみ】
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28年後の笑美子(えみこ)ちゃんは、クマになっていました。(笑)
いえ、実際には、そんなはずはありませんね。
クマの着グルミを着ていたかのように見えたのです。
霧のような雨雲のような、モコモコしたものが、
何重にも重なり、スッポリとえみこちゃんの体を包んでいるのです。
【ワクワク】ちゃんと【情熱】君と【あこがれ】さん達が、会いに行った時、
えみこちゃんは、身動きが取れない状態で、ひとりぼっちでした。
誰よりも先に駆けつけた【ワクワク】ちゃんには、
今のえみこちゃんが、どういう状態なのか、すぐに理解できました。
「不安さんに、飲み込まれて、出られないんだわ」
今まで、【ワクワク】さんは、【不安】さんに飲み込まれた、
いろんな人たちを助けた経験がありました。
子供から大人まで、時には、赤ちゃんや、小鳥や犬まで助けてきました。
「今度もきっと、大丈夫よ。わたしにまかせてね」
【ワクワク】ちゃんは、仲間たちに向かって、ニッコリしました。
そして、えみこちゃんをおおっている、灰色の霧のところまで、飛んで行きました。
中へ飛び込もうとすると、はじき返されます。
【ワクワク】ちゃんは、えみこちゃんの回りをふわふわ飛びながら、
ワクワクすること、を想像します。
満開のひまわりのお花畑…
ヨットが浮かんだ風の気持ちいい海…
子供たちが無邪気に遊ぶ砂浜…
砂で作ったお山…
砂に寝転がるお父さんを砂に埋めて遊んだこと…
サカサカ横切る蟹の赤ちゃん…
【ワクワク】ちゃんは、ワクワクしながら、
どんどん想像していきます。
子供の頃、夏祭りや花火大会に行った時の、
えみこちゃんの日焼けした笑顔。
小学校の運動会で駆けっコが終わった後の
えみこちゃんの、照れ笑い。
15歳、フラダンスの発表会の日のえみこちゃんの晴れ姿。
18歳、初めて両親にボーイフレンドを紹介した日、
夜の宴会で皆で大爆笑した想い出。……
【ワクワク】ちゃんが想像しているのは、
えみこちゃんの思い出でした。
【ワクワク】ちゃんが想像すればするほど、
えみこちゃんも想いだすのです。
嬉しかったり、楽しかったり、
喜んだり、悩んだり、
励ましあったり、泣いたり……したことを。
いろんなことがあったなあ。
いろんな出会いがあったなあ。
いろんな経験をしたなあ。
「ほんとうにがんばったね」
【ワクワク】ちゃんが言いました。
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【4、不安さんを感じきる】
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本当に、がんばったなあ、
えみこちゃんは心から思いました。
ふいに、えみこちゃんを包んでいた霧がゆらいで、薄くなりました。
その隙に、【ワクワク】ちゃんは、霧の中に、入って行きました。
どこまで行っても、深い霧の中、
飛んでも飛んでも【ワクワクちゃん】は、
えみこちゃんまで、たどりつけません。
そのうちに、霧の中から声がしました。
「なんとなく、不安なの」
これはきっと、えみこちゃんの一番外側の不安さんね。
【ワクワク】ちゃんは思いました。
「わかるわ。」
「なんとなく不安なの」
また、声がしました。
「先が見えないことは、不安よね。わかるわ。」
「…………」
【ワクワク】ちゃんは、続けます。
「不安とは、まだ起こってない未来について、
心配な望まない出来事をイメージしてしまうことなの」
「でも、とってもとっても不安なの」
【ワクワク】ちゃんは、声を1オクターブあげました。
「えみこちゃん、無理に不安な気持ちを打ち消したり、
これじゃいけないって、思わなくていいのよ」
「…………」
「不安は、誰にでもある気持ちだから、ただ感じればいいの」
「不安なの」
「そうね。えみこちゃん不安なのね」
「……」
「その気持ち、感じてみてね。
ただ、感じるだけ……それだけでいいから」
えみこちゃんは、【ワクワク】ちゃんの、
どこか懐かしい声に導かれるように、
不安な気持ちを感じ続けました。
涙が溢れました。
いろんな感情が、
胸から噴水のように溢れてきました。
ネガティブ感と、ポジティブ感が、波立ち交差して、
胸の泉に幾重にも波紋を作ります。
まるで二匹のアメンボが競い合って、泳いでいるようです。
想いが、川のようによどみなくなく流れていくんです。
ただ感じるだけ。
えみこちゃんは、ただそれだけを意識しました。
耳元で【ワクワク】ちゃんの声が、
ずっと、聞こえていました。
「…………」
「…………」
しばらくすると、えみこちゃんは自分が何だか空っぽになったような気がしました。
「わたし、何もかもなくなっちゃったみたい」
「おめでとう!えみこちゃん、見事感じきったね」
【ワクワク】ちゃんの声がします。
えみこちゃんは、今、
空っぽな不思議な自分を感じるままに、目をつむります。
まぶたのうちに、鮮やかな星空が、浮かんで見えました。
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【5、何となくの不安さん】
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不安の始まりは、なんとなく……で始まり、
不安の終わりは、なんとなく……で終わる。
なんとなく、始まってしまう不安は、分かるような気がするけど、
なんとなく、終わってしまうような不安って、何なのだろうか?
私は、『なんとなくの不安さん』のそんないい加減さに、
時々ぐっと、惹かれてしまう。
だって、引き際が見事だし、そんな終わりの時は、
鏡の前の自分の不安顔に笑ってしまうから。
魂に焼きついた、ぬぐいきれないような不安も、
4つも5つも不安を抱えこんで、
不安の渦中に飲み込まれてしまっても、
なんとなく必要な時に終わりが来て、
本人がまだ不安にひたっていたくても、さらっと終わりを告げる、
不安って、そんなものかもしれない。
一般的には、心の陰陽の占める割合は、陰の方が、多く、
人の気持ちはネガティブに偏り安いといった傾向は確かにある かもしれない。
深読みすれば、時間や空間の置かれている世界では、
『なんとなく不安』な『未来』と、
『なんとなく幸せ』な『いま』が在るけれど、
時間や空間の制限を越えた世界では、
『不安』も『幸せ』も存在しなくて、
そこは、言わば、無限のなんとなくの世界で、
なんとなく、の雰囲気が、
自由奔放に果てしなく広がっていて、とめどがない。
そこでは、なんとなく、が他に染まることがない。
『不安』にもならず、『幸せ』にもならず、
ただ、あなたのことを、何百年、何千年、何万年待ち続けている。