未来へのGift Ward

幸せな未来へつながる言葉、 夢を叶える自分を創る言葉、 言霊を人生に活用して豊かになる言葉等を、 詩や物語やエッセイに変えてお届けします。

【泣き虫ドラゴンの冒険記】第1話~第4話

f:id:yumenoto555:20210903181020j:plain

【ドラゴンメッセージ】

 

 

◇始まりの章◇
 
~ふたたびめぐり合うと、決めた人へ~
 
 
 
 
太古の龍、ドラゴン、
 
 
その姿、変幻自在。
 
 
 
息をのむ気概で、羽ばたき、
 
空から風から集めたエネルギー、
 
 
 
絶え間のない生命酒を飲む。
 
 
 
 
黒いウロコに、銀の翼。
 
森に山にとどろく声を発し、
 
 
 
海を切り裂く風を起こす。
 
 
 
川の流れ、水流をせき止め、
 
らせんとなり、水中で息をする。
 
 
 
水面を蹴り、駆け上がり天に舞う。
 
誰を呼ぶか、誰に呼ばれるか。
 
 
 
今日にひそみ、明日に身を宿す。
 
時間を行きかう人に見えず、
 
 
 
ただあるべきところに、姿あらわす。
 
 
 
夢を吸い寄せ、悪夢を終わらせ、
 
希望をよみがえらせ、不安を閉じ込める。
 
 
 
勇気を思い起こさせ、闇を恐れずに飛びゆく。
 
 
 
その姿、みるべきところにある。
 
その魂、ふるえるところに共鳴す。
 
 
なすがまま、あるがまま、ゆくべきところへ
 
その姿、忘れぬもとへ。
 
 
 
身を焦がす誓いを 想い返す人たちに
 
繰り返しやってくる 月と太陽のはざまから
 
 
 
ありてやまぬ、たえてみえぬ絆を
 
求めてなおも 生き返す人の世に君臨す
 
 
 
翼を雄々しく 広げて睨む 眼光の奥深くに
 
深淵なるまことを持つ人よ
 
 
 
今世ではたがわぬ誓いを 果たしに来たが
 
おじけづくか ふみとどまるか
 
 
 
龍の胸に眠る記憶と 消えるか
 
選ぶがいい 決めるがいい
 
 
 
そして 力のすべてで 呼べ 
 
龍の来る日を 待ち詫びる人
 
 
 
 
向かい合おうぞ
 
 
この命交わそうぞ
 
 
 
 
この羽ばたきを
 
 
この呼気を
 
 
 
 
よもや忘れまい
 
 
 
 
向おうぞ
 
 
 
ゆく先々で、たえゆく龍の地で
 
 
 
わが主(あるじ)、わが友
 
 
 
わが戦友、わが対なる人
 
 
 
 
結び合おうぞ
 
 
ここに!
 
 
 
生きようぞ
 
 
ここに!
 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

【第1話】カバさんがやってくる

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

 

君は、泣き虫ドラゴンを知っていますか?
この世で一番、ドラゴンっぽくないドラゴンって言えば、
アフリカでは、知らないものはいないくらいでした。
 
 
泣き虫ドラゴンは、
サバンナの奥の沼地に暮らしていました。
 
大きくて、かたくて、紫色の胴体。
短い四本の手足、とんがってぶんとしなるシッポ。
ギザギザな歯と、大きな口。
 
そして、銀の翼に赤い瞳。
すがたかっこうは、他のドラゴンたちと同じでした。
 
でも、泣き虫ドラゴンには、たった一つ、
他のドラゴンたちとは、違うところがありました。
それは、鳴き声です。
 
 
月夜になると、
「ジョルディール」
と鳴き声を上げるのです。
 
それで、いつしかみんなから、
泣き虫ドラゴンと呼ばれるようになったのです。
 
 
 
ある月夜のこと、
いつものように沼のほとりで泣き虫ドラゴンが鳴いていると、
どこかから、大きなカバがやってきました。
 
「やあ、泣き虫ドラゴン。君の声を聞いてやってきたんだ」
 
「やあ、カバさん。会いにきてくれて、ありがとう」
 
「ところで、君が狩りをしているところは、見たことないな。
君のギザギザな歯や、するどいシッポが、何のためについていると思うんだい?」
 
「何のためだろう? 考えたこともなかった」
 
「きまっているじゃないか、そのギザギザな歯は、魚や動物たちを腹いっぱい食べるためさ。そのシッポだって、ぶんとしならせて、思いっきりぶつけてやれば、誰だってイチコロさ」
 
「そうだったんだね。でも、僕にはそんな気は起こらないなあ。
たとえば、そうだねぇ……うんうん、そうだ」
 
 
泣き虫ドラゴンは、何かを思いついたように、歯をカチッと鳴らし、
カバの目の前にやって来て、
 
「君の大きな歯を磨くのに、僕のシッポは、なんて便利なんだろう?」
 
泣き虫ドラゴンはそう言うと、ぐるりと後ろを向いて、
緑の藻(も)がいっぱいついたカバの歯に、とがったシッポの先を近づけました。
 
「まった! 泣き虫ドラゴン。そんなことを言って、本当はそのとんがったシッポで、わたしの口を一突きして、食べてしまうつもりなんだろう? 」
 
「けっして、そんなことはありません。この声に誓って」
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
泣き虫ドラゴンの鳴いている声を聞くと、不思議なことに、
カバは信じてみようという気持ちになりました。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

【第2話】ライオンさんがやってきた

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

 

カバは、大きな口を開けました。
泣き虫ドラゴンは、器用に、とがったシッポの先を動かして、カバの歯についた緑の藻(も)を、取りのぞきました。
 
それからというもの、カバは泣き虫ドラゴンの友達になりました。
 
 
今度は三日月の夜のこと、沼の岸辺で二つの目がキラリと光りました。
 
「泣き虫ドラゴン。またそんな声をだしておるのか?」
 
もじゃもじゃなたてがみをした、大きなライオンが、ぬっと現れました。
 
「やあ、ライオンさん。ご機嫌いかがですか?」
 
「ご機嫌か? すこぶるナナメだ。いや、それ以上の逆さナナメだ」
 
「どうしたんです?」
 
沼の中で泳いでいた泣き虫ドラゴンが心配になって、岸に上がって来ました。
 
「ワシのたてがみが、この間のつむじ風に巻かれて、もじゃもじゃになってしまったのだ。おかげで、みんなの笑いものだ」
 
「ハハァン、分かりました。ちょっとこの沼の水で、たてがみを濡らしてごらんなさい。そのあと僕の歯で、たてがみをとかしてあげましょう」
 
「そんなことを言いおって。実はワシを食べる気だろう。たてがみをとかすフリをしたドラゴンに食われたライオンは、数えきれぬわ」
 
「けっして、そんなことはありません。この声に誓って」
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
泣き虫ドラゴンの鳴いている声を聞くと、不思議なことに、ライオンは信じてみようという気持ちになりました。
 
さっそく沼に入ってたてがみを濡らすと、
岸辺で待っている泣き虫ドラゴンの前に来て、座り込みました。
 
「さあ、やってくれ」
 
ジョルディールは、大きな口を開けて、ライオンのたてがみを噛みながら、上から下へと、とかしていきました。
 
やがて、ライオンのたてがみは、ふさふさした立派なたてがみに戻りました。
それからというもの、ライオンは泣き虫ドラゴンの友達になりました。
 
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

【第3話】隣の沼のドラゴンがやってきた

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

 
ある満月の夜のこと、
隣の沼に住んでいるドラゴンがやってきました。
姿かっこうは、泣き虫ドラゴンそっくりです。
 
「やあ、泣き虫ドラゴン。いい月夜だね。僕たちドラゴンにとって、最高じゃないか。体を動かしたくて、ウズウズするよ」
 
「やあ、隣の沼のドラゴンさん。ご機嫌よう。本当にいい月夜だね。ワクワクするなあ。今夜は友達が遊びに来るんだ」
 
「君は、本当に友達が多いな。今夜は誰が来るんだい?」
 
「カバさんとライオンさんだよ」
 
「ほほう。それは楽しそうだね」
 
と言った隣の沼のドラゴンの目がキラリと光りました。
 
「ところで、君は聞いていなかったのかなあ。ライオンに赤ちゃんが生まれたそうだよ。それで今夜はお祝いのパーティーがあるんだ」
 
「えっ。それは知らなかったなあ。ほんとう?」
 
泣き虫ドラゴンは、目を丸くしました。
 
「ああ、本当さ。ライオンのヤツ、君をビックリさせたかったのさ。実は、僕から君に伝えてくれって、頼まれたんだ。サバンナの西のはずれのバオバブの木の下でやっているそうだよ。君も早く行かなくちゃ」
 
「なんだ、そうだったのかぁ。ありがとう、隣の沼のドラゴンさん。それなら僕のほうから行かなくちゃ」
 
泣き虫ドラゴンはそう言うと、沼から這い出して、西へ向かって、飛んで行きました。
 
泣き虫ドラゴンが小さくなって見えなくなると、隣の沼のドラゴンは、泣き虫ドラゴンが暮らしている沼に入っていき、泳ぎはじめました。
 
しばらくすると、カバがやって来ました。
 
「やあ、泣き虫ドラゴン。遊びに来たよ」
 
「やあ、カバさん。会いに来てくれて、ありがとう。今日は本当に水遊びに持ってこいの日だね。その前に、君の歯を磨いてあげよう。僕のシッポは、君の歯を磨くのに便利だから」
 
「ありがとう、泣き虫ドラゴン。それなら久しぶりにやってもらおうか」
 
カバは沼のほうを向いて、大きな口を開けました。
 
それを見ると、沼からゆっくり這い出してきたドラゴンが、くるりと後ろを向いて、シッポをカバの大きな口に近づけました。そして、カバがあっと気がついた時には、もう遅かったのです。
 
ドラゴンのとんがったシッポが槍のように、カバの口をつらぬきました。
カバは、ガバガバガバと、大きな鼻息を鳴らし、一声、
 
「泣き虫…ドラゴン…」
 
とつぶやくと、倒れてしまいました。
 
 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

【第4話】サバンナを駆け抜けてゆく一陣の風

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆

 
ドラゴンはゆっくりカバを食べはじめました。
賢い君は、もう気がついたことでしょう。
なんてズル賢いドラゴンなんでしょう。
 
こんなドラゴンが泣き虫ドラゴンのはずがありません。
 
「ああ、うまいうまい。久しぶりにカバにありつけたぞ。
この調子で、ライオンの奴も食べてしまおう」
 
 
隣の沼のドラゴンが、岸辺でガツガツとカバを食べていると、
ふいに後ろに気配がしました。
 
そこには、たてがみを逆立てた、物凄く怒った顔のライオンが
立っていたのです。ライオンはそのままプイッと後ろを振り返り、行ってしまいました。
 
 
やがて、泣き虫ドラゴンが沼に戻ってきました。
泣き虫ドラゴンは、サバンナの西のはずれのバオバブの木の下に
行ってみましたが、誰もいませんでした。
 
泣き虫ドラゴンは、待ちました。
星が流れて、朝になり、お日さまが昇り、
西の空が真っ赤に染まりました。
 
とうとう誰も来ませんでした。
 
 
泣き虫ドラゴンが、あきらめて沼に戻ると、
マブシイほどの月明かりに照らされて、
カバが倒れているのが、目にとまりました。
 
お腹は、ポッカリ穴が空いて、なくなっています。
泣き虫ドラゴンは、驚きました。
いったい何があったと言うのでしょう。
 
泣き虫ドラゴンは、悲しくて鳴きました。
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
泣き虫ドラゴンの声は、サバンナ中に、響き渡りました。
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
あらゆる動物たちが目を覚ましました。
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
泣き虫ドラゴンの悲しみは、おさまりませんでした。
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
一陣の風が、サバンナを駆け抜けました。
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
泣き虫ドラゴン鳴き声は、お月さまに吸い込まれて行くようでした。
 
「ジョルディール。ジョルディール」
 
ふいに泣き虫ドラゴンの後ろで、物凄い勢いで、
何かが近づいてくる足音が、聞こえました。
泣き虫ドラゴンは、思わず、後ろをを振り向きました。
 
ヒュンと何かが月夜へ飛び上がり、
泣き虫ドラゴンのシッポの上に着地しました。
泣き虫ドラゴンのシッポに、しびれるような痛みがはしりました。
 
見ると、怒った顔のライオンが、立っていました。
 
 
〈続く〉